■「墨東」以後の事情などを考慮して…。
囲碁ブログやってた時に書いた、救急受け入れ問題に関するよく出る質問・疑問に答えたFAQに加筆・修正とかをやってみたり。
「救急受け入れ問題FAQ」は、去年10月の墨東の一件より前に作った物なので、墨東以後に起きた医療事情なども考慮して加筆・修正してみた。
●なんで急患の受け入れを断るの?
・(人員・設備が足りない…などの)物理的問題で、(裁判で「やってはいけない」とされた…などの)法的問題で、断らざるを得ない状態にあり、これは「受け入れ拒否」ではなく「受け入れ不能」なんです。
●なんで「専門外だから」が断る理由になるの?
・「専門外の患者を受け入れてはいけない」という司法の判例(奈良心タンポナーデ事件)があるからなんです。
●ベッドが無いなら、廊下で治療すればいいんじゃないの?
・「設備不十分な状態で患者を受け入れてはいけない」という司法の判例(加古川心筋梗塞事件)があるんです。
・そもそも、「ベッド」「ベッド」って言われてますけど、病院でいうところの「ベッド」は、心電図とか、酸素マスクとか、呼び出し用ボタンとか、それを管理する人員とか、それら全て「込み」ですからね。もはや「ベッド」というより「設備」と言ったほうが適切かもしれません。
●応急処置してから、他の病院に移すのは駄目なの?
・「応急処置して他病院に転送する位なら、最初から十分な態勢のある病院に受け入れさせよ」という司法の判例(上に同じく、加古川心筋梗塞事件)があるんです。
●なんで、一度断った病院が、後になって受け入れるなんて事があるの?
・救命中であった患者が「落ち着く」か「亡くなる」かのどちらかで病院側に「空き」が出来たか、もしくは、非番であったスタッフを呼び出すなどして受け入れる状況が整ったからです。
・非番であるスタッフを呼び出すことは緊急手段で、そう何度も行うことは出来ません。スタッフが疲弊し、過労死を招きます。
●有名人や金持ちだったら嬉々として受け入れるんじゃないの?
・西村真悟議員の息子さんが飛び降り自殺した事件では、重度のうつ状態で入院の必要があるとされながらも、「ベッドが無い」という理由で入院できませんでした。
・安田大サーカス隊長の安田裕己さんが精索捻転症で緊急入院した際、受け入れ態勢が無いために、複数の病院から受け入れを断られていました。
・俳優の別所哲也さんの長女が未熟児で産まれた際、NICU(新生児特定集中治療室)が無いために、複数の病院から受け入れを断られていました。
・もはや、コネやカネではどうにも出来ない程に、患者の受け入れが困難な状況なんです。
●ぶっちゃけ、人の命より金儲けのほうが大事なんでしょ?
・金儲けのほうが大事だったら、そもそも、不採算部門である救急なんて、最初からやりません。
・救急は、医師、看護婦、薬剤師、事務会計、あらゆる部門のスタッフを24時間体制で待機させる必要があるので人件費がかかりますし、24時間体制で機材を動かすための運営費もかかります。しかも患者が来るときと来ない時がありますから、患者が来なかった日にかけたコストは全て「無駄」になります。救急は、金儲けとは程遠い「大赤字部門」なんです。
●医師が足りないなら、海外から医師を呼んだらいいんじゃない?
・本国より遥かに待遇の悪い日本に来るメリットが見当たりません。…というのも、実は、日本の医師の待遇は、諸外国のソレよりも遥かに悪いんです。
・外国人の立場から考えれば、「薄給で奴隷的な扱いをされる」日本なんかよりも、ちゃんとした人間として待遇される他の国に行った方が良いですよね、常識的に考えて。
●ドクターヘリを導入したら?空からなら直通でしょ?
・ヘリを導入するにも、安全問題で飛行が制限されたり(飛行出来ない区域がある、夜間の飛行が出来ない、など)、ヘリポートのある(作れる)病院が少なかったり、運営コストが大きすぎる(年間およそ2億円)…など、色々と問題が山積みなんです…。
・あと、ドクターヘリを必要とするほどの重症患者を扱う「3次救急」自体の数が減っていることも問題の一つとなっています。
●リアルタイムでベッドの空き情報の分かるネットワーク、システムを作ったらいいんじゃない?
・いくら良いシステム、良いネットワークを作っても、医師の手術スピードが上がる訳でもなく、患者を診るための設備が増える訳ではないため、根本的な解決とはなり得ません。
・また、それに近いシステムが既にあるのですが、現在、病院側にそのシステムを操作するマンパワーが足りないために、空き情報をリアルタイムに更新出来ない…という問題が発生しています。
●救急病院が急患を受け入れられないなら、救急病院を辞めちゃえば?
・現実に次々と辞め…ていうか、潰れていってるんです…。過去5年で430件以上…。
・特に、重症患者を扱う「2次救急」、救急最後の砦である「3次救急」が減っていることが深刻な問題となっています。
・また、一つの病院が救急を撤退してしまうと、その病院が受け入れていた患者が他の病院に流れ込み、その病院のキャパシティをオーバーして受け入れ不能…という、「受け入れ不能のドミノ状態」に陥ってしまう…という危険性があります。
●1次・2次・3次って何?どれも救急病院じゃないの?
・救急病院は、患者の緊急度の度合いによって、「1次救急」「2次救急」「3次救急」…と種別されています。
・「1次救急」は、入院や手術の必要が無い患者が対象で、「2次救急」は、入院や手術が必要な患者が対象、「3次救急」は、1次・2次では対応できないレベルの重症患者が対象となっています。
・ここ数年、救急医療が不要なレベルの「軽症患者」が、夜間救急…特に「2次救急」「3次救急」に駆け込み、夜間救急がパンク状態になっている事が、深刻な問題となっています。
●2〜30件も断わられる事なんてあるの?
・大多数の救急が、マンパワー不足・キャパシティ不足のために、常にパンク寸前(or 本当にパンク)の状態に陥っており、2〜30件、いや、それ以上断られる可能性は、大いにありえます。
・また、過重労働で医師が倒れる、燃え尽きて退職…などで、救急指定を返上する病院も出ており、今後は「受け入れ不能」状態が加速、最悪、「たらい回せる病院」すら無くなり立ち往生…という事態もあり得ます。
●救急病院が多い東京でも患者の受け入れが出来ないのはなぜ?
・救急病院は多いですが、それでも追いつかない程に人口が多すぎるんです。
・また、東京の周囲の他県の受け入れ状況も非常に厳しく、他県からの救急患者が東京に流れ込んでしまっている…という問題を抱えていたりします。(大阪府も同じような問題を抱えている)
以下、関連動画とかその他諸々。
あと、自分と同じように、医療問題に心を痛めている一般人の方のリンクを。
Yahoo!ブログ - 一般人が医療問題について考える
http://blogs.yahoo.co.jp/ougonno_toki
フツーの人のできる医療崩壊阻止方法はあるか?
http://soshihouhou.cocolog-nifty.com/blog/
医療崩壊を少しでもくい止めたい一般患者の会
http://d.hatena.ne.jp/ancomochi/
医療崩壊を憂える一般人のメモ
http://d.hatena.ne.jp/SIRO0112/
…。
……。
………。
近いうちに、また同じような事件が起きて、
http://s01.megalodon.jp/2008-1024-1105-57/punigo.jugem.jp/?eid=486
「病院の傲慢だ!」
「それでも医者か!」
「『医は仁術』は死語になったのか」
「命より金儲けのほうが大事なのか」
「患者を受け入れられない病院は看板を返上しろ」
「殺人病院だ!」
「病院が妊婦を殺した!」
「ベッドが無い?そんなの理由になるのか!」
「ベッドが無ければ廊下に寝せればいいじゃない」
「熱意が欠如している!」
「救いたい!という気持ちが無い!」
「ドラマのような熱意のある医者はいないのか!」
「嫌なら辞めろ、代わりはいくらでもいる。」
などと言う人間がワンサカ出てきそうで不安です…。
■FAQ修正を色々と悩んでみる
FAQに「足蹴にされるバケツ」の話を入れるべきかなぁ…と思ったけど…うーん…。
●どうして同じ事が何度も起きるの?過去の教訓は活かされないの?
●患者を受け入れない救急など潰してしまえ!
↓
●実際に病院が救急を撤退する、もしくは病院自体が倒産する
↓
●その病院が受け入れていた、もしくは受け入れるはずだった患者が他の病院に流れ込む
↓
●その病院がキャパシティオーバーで受け入れ不能に
↓
●患者を受け入れない救急など潰して(以下延々とループ)
…。
……。
………。
10リットルまでの水しか入らないバケツには、11リットルの水は入りきれません。
1リットルの水がこぼれてしまった事で、周囲の人間が「なんだこのクソバケツ!」と足蹴にしたら、
バケツが凹んで、10リットル入れられたはずの物が、9リットルまでしか入らなくなりました。
…っていうのが、今の日本の医療崩壊(ていうか、医療に無理解な人間による医療破壊)の現状。
教訓とかそういう以前の問題。
医療従事者を叩けば叩くだけ、限界状況で頑張ってる医療従事者が心折られて現場を去っていくのですがね…。
奈良や福島はそうなりましたしね…。
マスコミや国民はいつになったらそれに気づくんだろうね…。